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今年も、青梅を漬ける

今年も、青梅を漬ける

2017.06.16 | 森下典子

庭の隅に、梅の木がある。小さな木だが、2月には枝の先にポップコーンのような白い花が咲いて、そのふくよかな香りに誘われた鳥たちが春を告げにやってくる。

 

梅の花が終わると、主役は、桃、桜、藤、ツツジ、菖蒲、紫陽花と移っていく…。そして、そろそろ梅雨に入るころ、何気なく見た梅の木にハッとする。うっそうと茂った葉陰に丸々とした青い実が覗いているではないか!

 

(もう、こんなに大きくなって…)

 

私は台所からザルを抱え、サンダルをつっかけて、いそいそと庭にでる。

 

梅の収穫である。枝からもいだ青梅を手にころんと載せると、表面はスウェードのような産毛に覆われ、白くモワッと靄っている。お尻みたいな形が可愛らしく、じーっと見ていると、なんだかギューッと強く握りしめたいような衝動でムズムズする。

 

梅の収穫は「かくれんぼ」にも似ている。青梅は、同系色の青葉に紛れて見えにくい。全部穫ったと思っても、木から少し離れ、目を細めて眺めると、あっちにもこっちにも見える。さらに、しゃがんで下から見上げると、まだまだ、あそこにも、ここにもいっぱい……。

 

ザルにどっさりともいだ青梅を台所で処理する。まずは盛大に洗い、アク抜きに2,3時間水に漬けておく。それから布巾で水気をとり、生り口の窪みについた茶色いヘタを竹串の先でヒョイヒョイ取る。「梅しごと」は楽しくて、つい鼻歌がでる。

 

わが家は、これでよく「梅味噌ドレッシング」を漬ける。梅1キロに対して、砂糖1キロ、味噌1キロをガラスの広口瓶に入れ、涼しい場所に置く。それだけだ。時々、かき混ぜながら様子を見ていると、やがて梅に皺が寄り、エキスが染みでてくる。だいたい3か月から半年もすれば、梅は水分が抜けきってシワシワになり、味噌はトロッとしてくる。梅を取り除いてできあがりだ。

 

この「梅味噌ドレッシング」は、野菜にかけても、ご飯に載せても、こたえられないうまさである。私はよく冷奴にかける。梅の香りと味噌の風味が混じり合って、もうたまらない一品となる。

 

そして、もう一種類、青梅で漬けるおすすめは「梅サワードリンク」である。これも至って簡単で、失敗はない。青梅1キロに対して、氷砂糖1キロ、お酢1リットルをガラスの広口瓶に入れ、置いておく。時々揺すって混ぜながら1か月ほど置くと、梅のエキスがでて、淡い黄金色の液体になる。梅がシワシワになったら取り除いてできあがりだ。

 

これは、かなり濃厚なシロップである。飲むときは、グラスに少し入れ、冷えた炭酸水で5、6倍に割るといい。絶品の「梅サワードリンク」が味わえる。

 

猛暑の頃、外出先から大汗を流しながら帰ってきた時や、夏バテで食欲のない時などに飲むと、シュワーッと清涼感が駆け抜け、突き抜けるような青空が目に浮かぶ。

― おとずれるたびに、いい発見。EPARK ―

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森下典子

森下典子

1956年、神奈川県生まれ。日本女子大学文学部国文学科卒業。「週刊朝日」の名物コラム「デキゴトロジー」のライターを経て、「典奴どすえ」でデビュー。主な著書は『日日是好日 お茶が教えてくれた15のしあわせ』(新潮文庫)、『いとしいたべもの』(文春文庫)、『前世への冒険』(光文社 知恵の森文庫、『猫といっしょにいるだけで』(新潮文庫)など。おいしさ さ・え・ら - カジワラ

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