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母から継いだ、わが家のドレッシング

母から継いだ、わが家のドレッシング

2017.03.02 | 森下典子

母の作るドレッシングの味が急においしくなったのは、10年くらい前のことだ。

 

それまでも、うちでは市販のドレッシングではなく、母が作ったドレッシングをずっと食べていた。それは、サラダオイルと酢、1:1の割合に塩と胡椒を入れて混ぜただけのごくシンプルなもので、これといって味に特徴はなかった。

 

その朝、いつものようにドレッシングをサラダにかけ、レタスを口に入れた途端、

 

(……あれ?)

 

何かの香りが爽やかに広がり、鼻に抜けた。

 

そのおいしさにびっくりして、私は改めてサラダをじっと見た。

 

「どうしたの、このドレッシング。いつもと違うよ」

 

「どう?」

 

「すんごくおいしい」

 

「この前、テレビで見たのよ。玉ねぎの絞り汁を少し足すといいって。それと、お醤油もちょっと入れてみた」

 

言われてみれば、口の中に広がり、鼻に抜けたのは、確かに玉ねぎの香りだ…。

 

「玉ねぎには、血をサラサラにする効果があるっていうから、体にもいいと思うわよ」

 

ドレッシングに絞り汁を少し足しただけで、サラダの格が急に上がってイタリアンみたいな味になっていた。その上、血がサラサラになるなんて、玉ねぎはエラい。

 

お客様がいらした時、サラダを出すと決まって、

 

「このドレッシング、おいしい」

 

と、よろこばれるようになった。そのたびに母は作り方を説明した。

 

5年前、母は膝が痛くて台所に立てなくなり、代わって私が料理をするようになった。私はドレッシングの作り方を母から受け継いだが、その時、サラダオイルをエゴマ油に代え、玉ねぎの絞り汁の割合も増やした。

 

エゴマ油は風味も良く、血管を軟らかくするαリノレン酸が多く含まれているという。エゴマ油:酢:玉ねぎの絞り汁=1:1:1。そこに塩、胡椒、醤油を加え、よくシェイクする。

 

……すると、どうだろう。わが家のドレッシングは前よりもっとおいしくなった。体にいいものは、味もいいのである。

 

玉ねぎといえば、春は新玉ねぎの旬。新玉ねぎは甘みがあって、ただスライスしただけでもおいしい。私は10代のころ、新玉ねぎのスライスに、生卵と鰹節とお醤油をかけたものをご飯にのせてよく食べた。自分でも、

 

(どうしてこんなに食べられるんだろう?)

 

と、思うほど何杯もおかわりしたものだ。

 

その新玉ねぎのスライスに、スモークサーモンなどを合わせ、そこに、わが家特製の玉ねぎの絞り汁を入れたドレッシングをじゃぶじゃぶかけて冷蔵庫にしばし置くと、立派なマリネになる。

 

新玉ねぎと玉ねぎ。ダブルの組み合わせで、これまたうまい!

― おとずれるたびに、いい発見。EPARK ―

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森下典子

森下典子

1956年、神奈川県生まれ。日本女子大学文学部国文学科卒業。「週刊朝日」の名物コラム「デキゴトロジー」のライターを経て、「典奴どすえ」でデビュー。主な著書は『日日是好日 お茶が教えてくれた15のしあわせ』(新潮文庫)、『いとしいたべもの』(文春文庫)、『前世への冒険』(光文社 知恵の森文庫、『猫といっしょにいるだけで』(新潮文庫)など。おいしさ さ・え・ら - カジワラ

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