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子どもにあえて「待つ」経験をさせるべき理由

子どもにあえて「待つ」経験をさせるべき理由

2017.02.22 | 品川裕香

年齢を問わず、「何かを待つ」経験をした子とほとんどしなかった子にわかれます。「待つ力」があるかどうかは、その後の人生にとってとても大きな問題だということをご存知ですか?

 

待てる子どもは「注意を戦略的に配置する力」がある

 

「待つ」ことについては、1968年にスタンフォード大学の心理学者ミシェルらが行った「4歳児がマシュマロを食べずに我慢できるか」という実験がとても有名です。

 

4歳児を集めマシュマロを前に置いて「今、食べてもいいけど、15分待てたらもうひとつ食べてもいい」「途中で食べたくなったらベルを鳴らせば食べられるけど、2個めのマシュマロはもらえない」と伝えて子どもだけにします。

 

たいていの子は待つことを選び、完全に待てた子はだいたい1/3、待てなかった子も1/3くらいだったそうです。

 

待てた子は生まれつき意志の力が強いとか我慢強いのでしょうか? 

 

ミッシェルは、すぐに食べない子は意志の力が強いわけでもなければ我慢強い性質というわけでもなく、「満足を遅延させる力」、つまり「注意を戦略的に配置する力」があるだけだと指摘。

 

どういうことかと言うと、実際実験で待った子どもたちは、目を閉じる、手で目を隠す、髪の毛をいじる、後ろを向く、おもちゃで遊ぶなど、マシュマロ以外のことを考える行動をしていました。まさに、自分の注意がマシュマロから他に向くように仕向けていたのです。

 

ミシェルらはさらに12年後、40年後と追跡調査を実施。その結果、4歳の時に満足を遅延させる力が「高い子」は「低い子」よりも大学適性試験の点が高く、「低い子」はのちに肥満になったり、薬物などの問題を抱えたりする可能性が高いことなどがわかりました。

 

これは有名な実験で、ミシェルは一般向けに本も書いていますし、いろいろな子育て本でもよく引用されているのでみなさんもお聞き及びかもしれません。

 

大人になってから急に変わることはできない

子どもにあえて「待つ」経験をさせるべき理由

 

しかし、私が言いたいのは「問題は、年を追うごとに社会的に待つ機会が減ってきているという点」についてです。

 

ひとり1スマホの時代、誰もが好きな時間に好きな人と繋がることができます。公衆電話を使うために並んで待つこともしなければ、待ち合わせ場所に相手が来なくてひたすら待ち続けるなんてこともしません。

 

たいていのものは100均でそろうので、何でも使い捨てで、次の物を買ってもらうまで待つということもあまりしなくなりました。

 

「待つ」力を、「満足を遅延させる力」で「注意を戦略的に配置する力」だとするなら、小さいうちから「満足を遅延させるための訓練」を受けておかないと、大人になったからといって急に「満足を遅延できるようになる」わけではないんです。

 

あえて「待つ場面」を設定する

 

ポイントは「待ちなさい」「我慢しなさい」と言葉で指導するより、まずは日頃から日常生活のなかで「待つ」場面を設定して「待つ」練習をさせること。

 

その際、「どうすれば目の前にある欲求から気をそらして、満足を遅延できるか」、その気のそらし方を一緒に考えたり、そらし方のコツを教えたりするほうが効果的です。

 

たとえば、「ゲームを約束の時間以上したがる」とします。

 

まず、時間を決めてその時間以上はさせないことを守る。これが「待つ場面」の設定です。そのなかで、どうすればやりたい気持ちをそらせるか一緒に考えてあげるというのもひとつの方法。

 

ポイントは、大人が「こういう方法があるよ」と教えるのではなく、本人が自分で注意をそらす方法を考えだすこと。ゲーム以外のことを考えてみる、目の前にあるゲームは絵に描かれたものだと想像する、ゲーム機を見ない…。

 

自分で「注意のそらし方」を見つけ実践していくこと。それがのちの人生においても大事になってきます。就学前のお子さんでもぜひ実践してみてください。

― おとずれるたびに、いい発見。EPARK ―

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品川裕香

品川裕香

教育ジャ-ナリスト・編集者。文部科学省中央教育審議会委員。元内閣教育再生会議委員。出版社で雑誌・書籍の編集に携わった後、独立。教育・医療・社会問題を異文化理解・予防的観点から取材執筆。著書に『いじめない力、いじめられない力 60の〝脱いじめ〟トレーニング付』(岩崎書店)、「『働く』ために必要なこと: 就労不安定にならないために」(筑摩書房)など多数。

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